「多くは語りません。読んでください」
『少女禁区』という小説を読みました。
怪しげなタイトルに心惹かれたから、というわけではありません。
たまたま見ていた動画のyoutuberがお勧めしていたからです。
「多くは語りません。読んでください」
いや、語ってくれと。
彼はただひたすらに懇願するだけでした。
物を勧める上での説明責任を完全に放棄した超法規的な手法。
しかし、それゆえに訴求効果は絶大。
次の日から自分は狂ったようにその小説を探し求めました。
ブックオフを見つけるやいなや目を血走らせ入店。
「ブックオフなのに本ねーじゃん!」
と悪態を吐き、買いもしないセクシーDVDゾーンを一周して帰る。
そんな日々に疲れを感じ始めてきた頃、某ショッピングサイトにてとある情報を入手しました。
『少女禁区』2500円(プレミア価格)
なんとこの小説、かなりのプレミアが付いているよう。
それならどのブックオフにも置いてなかった事にも納得がいきました。
ただ、文庫に2500円払うというのは…。
どうしても二の足を踏んでしまいます。
そしてなによりも、発端となったキーマンは何も語っていないということ。
「多くは語りません。読んでください」
ここまで来て、この不気味な煽り文句の真の恐ろしさが分かってきました。
例えば、「絶対に泣けるから読んでください」
そんな類の言葉でお勧めされていたら、恐らくは買わなかったでしょう。
別に泣きたいわけではないので。
「多くは語りません。読んでください」
対して、この殺し文句は受け手サイドへの逃げ道を一切封じてきています。
「多くは語りません」=「私には表現しきれない程の魅力がある」
そうやって前向きに受け取ることも出来るからです。
よしんば宇宙の心理を理解できる可能性すら示唆しています。
しかし一転。
「多くは語りません」=「このクソっぷりを言語化する時間すら惜しい」
だとすれば、それはもはや悪戯に被害者を増やそうとする愉快犯的な所業。
購入を決意した瞬間、暗黒面への入り口が開かれること間違いなしでしょう。
真相に気付いてからは後の祭り。
寝ても覚めても『少女禁区』と「多くは語りません」が脳内で繰り返しプレイバックされる日々。
何かを語ってくれればこんな事にはならなかった。
けれども、彼は何も語ってはくれなかった。
地獄の輪廻から抜け出すためには『少女禁区』を買う以外に方法はありませんでした。
そしてついに購入してしまいましたよ。
2500円という値段にしてはあまり厚みを感じられません。
やはりプレミア価格なのでしょう。
それで、実際に読んでみた感想なんですけど…。
何と言うか、その…。
言いたいことはたくさんあるのですが…。
よし!!もう言っちゃいますよ!!
「多くは語りません。読んでください」