おっぱい HiGH & LOW
空からおっぱいが降ってくる。
そんなことはあり得ない。
どうしてそう言い切れるのだろうか。
反論を立証することは不可能だ。
なぜなら。
ある日、予想だにもせず。
おっぱいはあなたの前へと現れるのだから。
「〇〇さん、おっぱい大きくなったよね~!」
「えー、そんなことないよー!」
ふと耳に飛び込んできたのは職場の先輩方の会話。
瞬時に自らの関わる余地のない話題だと悟り、
意味もなくエクセルを閉じたり開いたりする作業を再開した。
すると。
「○○君も大きくなったと思うよね~!」
そう問い掛ける先輩の眼差しの先にいたのは、紛れもなく自分だった。
と言うか名指しだった。
考えなしに即返事をしようものなら、地獄行き間違いなしとなるこの難問。
近年稀に見るほどのキラーパスと言えるだろう。
一見すればただの「YES」か「NO」で答えるだけのクローズドクエスチョン。
しかし。
「YES」と答えれば「キモい」
「NO」と答えれば「キモい」
どちらにしても「キモい」が待ち受けている鬼畜仕様となっている。
何度タイムリープしてもこの未来は変えられないのである。
もし仮に自分が悟空だったなら。
「オラもおっぺぇ大きくなってる気がすっぞ!」
これで何事もなく切り抜けられるだろう。
あるいは自分が職場における天才的なキャラだったなら。
「1.32ってところですかね」
「え?どういうこと?」
「前回会った時から、おっぱいの表面積は1.32倍に増加していますよ。(眼鏡クイッ)」
これはこれで今後のトラブルもまとめて避けられる気がする。
心のブラックリストに登録されるという形で。
ただ、もちろん自分は悟空でも天才的なキャラでもない。
ならば、己の持つ武器で立ち向かうのみではないか。
やってやる、やってやるぞ。
そっちがその気ならかかって来いってんだ。
こちとらいい歳こいてなぁ!
おっぱいに屈するわけにいかないんだよぉ!
おっぱいがなんぼのもんじゃい!
お~っぱい!!お~っぱい!!
「そうっすね、とても…あ、いや、何でもないです」
と、自分の口からついて出てきたのはこの言葉だった。
何かを言おうとして言わない。
いざ尋常にと刀を抜いて、そのまま家に帰る武士が如く。
これが無策でおっぱいに挑んだ者の末路である。
その後はなんか変な空気になって終わった。
誰か教えてください。
「おっぱい大きくなったよね?」
この試練を乗り越える方法を、どうか、切に。
怖くて夜も眠れません。