ザ・ノンフィクション 〜ヒーローの抱える苦悩と本音〜
「今は気軽に顔も食べてもらえませんからね」
――そう語る彼の横顔に――
――かつての優しい笑みはなかった――
『ザ・ノンフィクション
~ヒーローの抱える苦悩と本音~』
「おいこらバタ子ぉ!!
何で酒切らしとんねんわれぇ!!」
スタッフ(以降ス):もしかして、あれって…
「あぁ、ジャムおじさんです」
ス:裏ではいつもあんな感じなの?
「いや、コロナ騒動からですね。
実はあの人、パン焼き中毒なんですよ」
ス:パン焼き中毒?
「まぁ、見ての通りですね。
長時間パンを焼かないと、理性を失うみたいで」
ス:今はお店開けられないもんね。
「そうなんですよ。
作っても、食べてくれる人がいませんから」
ス:そう言えば、バイキンマンとは最近どう?
「今は戦うどころじゃないですね。
実家が大変なことになってるみたいで」
ス:彼は(コロナ騒動には)無関係だよね?
「えぇ、もちろん。
ただやっぱり、風評被害はあるみたいですね。
日中、心ない電話が鳴り止まないと」
ス:もしかして、連絡取り合ってるの?
「LINEですけどね。
あ、これオフレコでお願いします」
ス:他のヒーローも自粛中?
「あいつらは終わってますよ、正直」
ス:え、何かあったの?
「キャバクラ行って、謹慎食らってます」
ス:食パンマンとカレーパンマンで?
「あとカバオですね」
ス:カバオは確か未成年だよね?
「そうです、だから炎上しまくってますよ」
ス:我慢できなかったのかな。
「マジでありえませんよね。
ヒーローとしての自覚が足りないんですよ。
場合によっては、解散も考えてますから」
ス:ヒーロー業界にも打撃あるんだね。
「〇〇戦隊〇〇レンジャーみたいな、
いつも五人で戦う人達いるじゃないですか」
ス:あぁ、昔はゴレンジャーとかいたね。
「密とかソーシャルディスタンスとか。
やっぱり住民達から色々と言われてるみたいで」
ス:確かに、距離近くなりがちだもんね。
「笑っちゃうんですけど。
お互い2m以内に近づくと鳴るブザーがあって。
全員でそれつけながら戦ってるらしいです」
ス:とても戦いづらそうだね…
「あと、合体技を出せないからでしょうね。
倒すまでにいつもの5倍ぐらいかかってました」
ス:なんか…本当にお疲れさまです。
「磁石系の敵が来たら、地球終わりですよ」
ス:今日は忙しい中、ありがとうございました。
「いえ、僕はいつもキャンキャン鳴いてるだけなんで」
ス:それでは、チーズさん。
最後に視聴者の方へのメッセージをどうぞ。
「ドッグフードは、ペティグリーチャム派です」
生きて~る生きて~いる~。
――手洗いうがいを済ませた彼は――
その現だけが~ここにある~。
――犬小屋の奥へと姿を消した―――
完