暇なときにでも

日々起きた出来事やふと思いついたことを書きます。たまに本、映画、広告のことも。

掴み取れ一番星、聞くんだA賞の声【後編】

一番くじの景品の内分け。

 

A賞…おっきいぬいぐるみ(2枚)
B賞・C賞…ちっさいぬいぐるみ(4枚)
D賞・E賞…ストラップ、ノート(たくさん)
F賞…指人形みたいなの(たくさん)

 

子どもが欲しがってるA賞への道のりは長く険しいのである。

 

さらに一番当ててはならないであろうF賞の数は約半分を占めてます。

 

いかにインポッシブルなミッションかがお分かり頂けただろうか。

 

おれはこのとき別のさらに重要なことについて考えていた。

 

“くじを引く順番”。

 

一番避けなくてはならないのはトリ(最後)だ。

 

何故なら前の二人が当てられなかった場合

 

期待感がまるで風船のように膨れ上がっていくからだ。

 

そしてその期待を裏切ったら最後“ボンッ”ですよ。

 

つまりおれは何としても一番目もしくは二番目にくじを引かなくてはならない!!

 

お父さん「あーD賞だって」

 

子ども「E賞だった!」

 

うぉぉぉぉい!!

 

早い者勝ち制なら先に言ってよぉぉぉぉ!!

 

おたくでは鍋やるときも肉類は早い者勝ちなんですかぁぁぁぁ!!

 

しかも何気に二人ともF賞は回避してるしぃぃぃぃ!!

 

お父さん「あとはお兄さんのだけだね」

 

子ども「がんばってお兄さん!」

 

おれ「任せてください。僕は幸運を吸い寄せるダイソンのような手を持つ男なんで」

 

子ども「吸引力の変わらないただ一つの!」

 

自らをさらなる窮地に追い込むことによって限界を超えた力を引き出す作戦です。

 

そしてついに

 

二人からの背負いきれない期待を背負って

 

おれの手が、箱の中へと、入れられた。

 

(ただくじを引くだけじゃ駄目だ)

 

(感じ取るんだ、A賞の呼吸を)

 

(石には石の呼吸が、草には草の呼吸が、A賞にはA賞の呼吸が!!)

 

(これだッ!!!!)

 

『そっちは違う!私はこっちよ!!』

 

そのとき、たしかに聞こえたんだ、おれを導いてくれるかのような声が。

 

(こっち・・?)

 

『もうちょい右!!』

 

(これかな・・?)

 

『その右斜め上!!』

 

(えぇ、よく分からないんだけど・・)

 

『えっと・・時計でいったら2時の方向!!』

 

(分かったぞ!これだッ!!!!)

 

『そう!それが私!おめでとう、後はその手を引き抜くだけよ!!』

 

(導いてくれてありがとう、A賞さん)

 

『え・・私の名前はFしょ・・』

 

スゥー・・・。

 

その後おれはビックバン土下座により事なきを得た。

 

きっとこれはお互い忘れられない出来事になっただろう。

 

あの子はおれの不甲斐なさを。

 

おれはあの子のまるで汚物を見るかのような目を。