バイト戦隊
今日はバイトの初出勤。
子供の頃からずっと憧れていた。
まさかタウンワークに載ってるとは思わなかったけど。
世のため人のため、誰にも正体を知られずに怪人たちと戦うんだ。
僕は今、緊張と期待を胸に、事務所のドアを開こうとしている。
『バイト戦隊 今日ちょっと用事あるんで出られませんジャー』
新人「おはようございます!」
勢いのある挨拶と共に入ると中にいたのは一人の男。
?「おぉ!今日から働いてくれる新人っていうのは君のことかな?」
新人「はい!これからお世話になります!」
?「おう!おれはバイトリーダー兼レッドを担当している者だ」
新人「レッドさん、よろしくお願いします!」
レッド「こちらこそよろしくな!早速だけどやりたい色の希望はある?」
新人「え、自分で決められるんですか!?」
レッド「他の人と被らなければ大丈夫だよ。
今空いてるのはブルーとピンクだったかな。
ブルーは怪人さんからのクレームに耐えられなく辞めちゃってさ
ピンクは店長兼司令官との不倫が奥さんにばれて気まずくなったらしい」
新人「いろいろ大変だったんですね・・」
レッド「あ、ペイントで勝手に奇抜な柄にするのだけは止めてくれな。
前に絵具で豹柄とかゼブラ柄にした奴が一般人に怪人と間違われて通報されちゃってよ。
あれは流石にまずいだろうってことになって禁止されてるんだ」
新人「僕は地味なやつでいいです…」
レッド「そうか。まぁ、色に関しては追々決めていこうか。
そうだ、最初の一カ月はこのバッチを胸に付けて出動してくれ」
<研修中>と書かれたバッチだった。
新人「えっと・・これ付けなきゃいけないんですか?」
レッド「そりゃそうだよ、怪人さんだって多少のミスは許してくれるようになるからさ。
優しい怪人さんだったら最後の必殺技がもたついても笑顔で待っててくれるし」
新人「気を遣わせないよう頑張ります・・」
レッド「あとはそうだな・・タイムカードは押し忘れるなよ。
ちなみに15分おきに給料が付くから際どい時は戦闘を長引かせた方がお得だ。
そこら辺は怪人さんもちゃんと分かってくれてるから」
新人「さっきから怪人さん物分かり良すぎないですか・・」
レッド「でもたまに自己中な怪人さんもいるから気をつけろよ」
新人「分かりました・・」
プルルルルル、プルルルルル。
突如鳴り響いたのは事務所の電話の音だった。
レッド「お電話ありがとうございます!こちらバイト戦隊です!
なんだって!?新宿に毒ナメクジ伯爵が現れた!?
すぐに現場に向かいます!!」
新人「出動ですか!
(これまでの説明では不審なことばっかりだっけど…。
実際に戦う姿を見れば!ずっと憧れてたヒーローの姿を見れば!)」
レッド「くそ…こんなときに!」
新人「どうしたんですか!?」
レッド「戦闘スーツを洗濯するために家に持って帰ったまま忘れてきちまった!」
新人「…」
携帯を取り出すレッド。
レッド「もしもし、イエローか?
今日のシフト代わってもらえるか…?
あーやっぱり試験前は厳しいよな…そっか、じゃあ勉強がんばれよ!」
新人「…」
レッド「新人、おれが戦闘スーツを取りに戻ってる間、人類の命運は君の手に…」
新人「帰ります」
地球に真の平和が訪れるまで彼らの戦いは終わらない。
~完~