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暇なときにでも

日々起きた出来事やふと思いついたことを書きます。たまに本、映画、広告のことも。

僕とおれと私の物語

嘘雑学。

 

こんな言葉を聞いたことはありますか。

 

おれがさっき考えた造語なんでたぶん誰も聞いたことないと思います。

 

嘘雑学とは、嘘の知識を本当のことであるかのように語るものです。

 

要するにただの嘘ですね。

 

そんな明日にでも使える嘘雑学をみなさんに学んでもらえたら嬉しいです。

 

今回ご紹介するのは“ある有名なお店の看板”に纏わる嘘雑学です。

 

では、ご覧ください。

 

――――小学二年生の夏――――

 

その頃、僕は友達がいない子供だった。

 

元から暗い性格で取り柄もなかった。

 

親はとても厳しい人たちだった。

 

毎日のように塾に通わされてたから友達と遊ぶ時間がなかった。

 

見たいテレビも見せてもらえずクラスのみんなの話題についていけない。

 

そんな状態が続けば当然、いじめの標的にされる。

 

殴られたり物を盗られたりは当たり前だった。

 

そんな小学二年生の夏。

 

いつも通りの学校からの帰り道。

 

僕はある人と出会った。

 

「おい坊主!」

 

振り返ると、近所でたまに見かける牛乳配達のおじさんだった。

 

「何ですか?」

 

「そのアザどうしたんだ?」

 

いじめっ子から殴られたときにできたアザだと思った。

 

「転んだだけです」

 

「アザなんてないけどな」

 

「え・・」

 

「いじめられてるんだろ?知ってるよ」

 

おじさんは学校にも牛乳配達に来てるらしくて、僕がいじめられてるところを何度か見かけたらしい。

 

「いいのか?このままで」

 

「よくないよ。でも、どうしようもないんだ」

 

「まぁ、そうだよなー」

 

このとき、男ならやり返せとか、お前にも原因はあるんじゃないかとか。

 

そんなことを言われると思ってた僕は少し驚いて、少し嬉しかった。

 

「おじさんも昔いじめられてな。どうしようもないんだよな、あれ」

 

「そのときはおじさんもただやられてるだけだったの?」

 

「いや、おれはそいつらを倒すために毎日牛乳を飲んでたな」

 

「毎日牛乳を飲んで強くなったの!?」

 

「ならなかったな。でも骨は強くなるぞ!だから一本買ってくか!?」

 

「結局商売かよ!」

 

それからは学校帰りにおじさんと顔を合わせば話し込むような仲になった。

 

おじさんと話すのは楽しかった。

 

僕が人と話す楽しさを知らなかっただけかもしれないけど。

 

おじさんは意外と物知りで僕が知らないことをたくさん教えてくれた。

 

飛行機が空を飛ぶために反重力装置っていうすごい技術を使われてる話とか。

 

それが嘘だと気づくのはもう少し経ってから。

 

おじさんは自分の夢も語ってくれた。

 

「この牛乳を世界中に広めておれをいじめたやつを見返してやる」

 

「僕もいつかいじめっ子たちを何かで認めさせて見返してやるんだ」

 

お互いに夢を叶えようと約束もした。

 

とにかく、何も無かった毎日が、何かあるじゃないかと思える毎日になった。

 

こんな日々がずっと続けばいいと思ってた。

 

でも、続かなかった。

 

最近おじさんを見かけなくなった。

 

三日も会わない日があれば長い方だったのにもう一週間も会ってない。

 

おじさんは僕のことなんかどうでもよくなったのかな。

 

そう考えてしまう。考えたくなくても考えてしまう。

 

不安になればなるほど、不安になる。

 

ある日、僕は初めて塾をさぼった。

 

「ただいま」

 

「あら、もう塾の時間じゃないの?」

 

「休んだ」

 

「休んだって・・体調でも悪いの?」

 

「今日は行きたくない」

 

「最近どうしちゃったのよ!成績も下がり始めてるし!」

 

「分かんない」

 

「もう変なおじさんもいなくなったんでしょ!」

 

「え・・なんでおじさんのこと知ってるんだよ」

 

「いや・・お隣さんから聞いただけよ・・」

 

「母さんがおじさんに何か言ったんじゃないのかよ!」

 

「・・・」

 

母さんは何も言わなかった。

 

僕はそれで全部分かった。

 

そのまま僕は怒りをドアに押しつけるようにして家を出た。

 

泣きながら、声ではない何かをわめき散らしながら、ひたすらに走った。

 

いつの間にか僕は知らない公園にいた。

 

「どうしたんだい?」

 

おじさんかと思った。

 

あのときのように振り返ると、そこにいたのは知らないおじさんだった。

 

そのときの記憶は曖昧で、後から聞いた話になるけど。

 

僕は誘拐されらしい。

 

おじさんが助けくれる。

 

何の根拠も無いのに心の中でそう信じていた。

 

おじさんは僕にとって

 

ヒーローみたいな存在だったから。

 

すぐに犯人は逮捕された。

 

僕は怪我一つせず家に帰ることができた 。

 

たまたま通りがかった人が警察に通報してくれたらしい。

 

おじさんは最後まで僕の前に現れなかった。

 

その後、母さんと父さんから夜遅くまで怒られた。

 

この事件で僕は学んだ。

 

人生なんて自分の期待した通りにはならないということを。

 

――――高校二年の夏――――

 

おれは私立の高校に入学した。

 

中学の頃のことは語れない。

 

語るほどの出来事が何もなかったからだ。

 

何もない日々をただ淡々と過ごしていた。

 

この一行で済んでしまうからだ。

 

趣味は?休日何してるの?

 

こうゆう質問には答えられない。

 

おれは何かに興味を持つということがなくなった。

 

あの日を境に。

 

得るべき感情を、得るべきときに得られなかったんだろう。

 

いじめられることはなくなった。

 

休み時間に話せる友達も何人かできた。

 

でもたまにあの頃に戻りたいと思うことがある。

 

いや、心の底ではずっとそう感じているのかもしれない。

 

将来の夢も無く、もっと早く時間が過ぎ去ればいいのにといつも思っていた。

 

ある日おれは近所のコンビニで買い物をしていた。

 

『この店でしか買えない限定品です!』

 

そんな売り文句で売られていた商品が目に止まった。

 

牛乳だった。

 

おれはおじさんの牛乳以外の牛乳は飲めなかった。

 

それでも久しぶりに飲んでみたくなった。

 

限定品という言葉の魔力なのかもしれない。

 

会計を済ませた後、のども渇いていたし店の前でのその牛乳を飲んでみた。

 

おれは、気付いたら涙を流してた。

 

飲んだことのある味。

 

懐かしい味。

 

あの頃の味。

 

それは紛れも無くおじさんの牛乳の味そのものだった。

 

何でおじさんの牛乳がここで売られているのか。

 

ただ味が似ているだけなのか。

 

頭の中の混乱をなんとか落ち着かせようとしていると

 

目の前の駐車場で業者の人がトラックの荷台の扉を開けていた。

 

その中に今飲んだ牛乳が積んであった。

 

おれはどうしてもこの牛乳のことが気になり尋ねてみることにした。

 

「あのーこの牛乳ってどこのものなんですか?」

 

「○○ってとこのだよ。昔は狭い範囲の配達しかしてなかったみたいなんだけどね」

 

おじさんの牛乳だと確信した。

 

「どうしてこのコンビニ限定なんですか?」

 

「あそこに看板があるでしょ」

 

「牛乳瓶ですよね」

 

「そう、この牛乳を作ってる人との契約らしいんだ」

 

「どんな契約ですか?」

 

「なんでもこの牛乳をこのコンビニにしか売らない代わりに、この牛乳瓶の絵を看板にしてくれって話だそうだ。それぐらいの価値はあるからって」

 

『この牛乳を世界中に広めておれをいじめたやつを見返してやる』

 

おじさんとの約束を思い出した。

 

『僕もいつかいじめっ子たちを何かで認めさせて見返してやるんだ』

 

おじさんは約束を守るために、夢を叶えるために、がんばってたんだ。

 

それなのに・・それなのにおれは!!

 

おじさんがいなくなったからとか!!

 

親からの期待が重すぎるとか!!

 

全部周りの人や環境のせいにして逃げてただけだった!!

 

その日流した涙の数は、あの日もよりも少し、多かったかもしれない。

 

――――大学二年の夏――――

 

私はある文系の大学に入学した。

 

おじさんとはまだ会えていない。

 

牛乳の製造元を調べればおじさんに会いに行くことはできる。

 

でも、それはまだしてはいけない気がする。

 

私の方が約束を果たしていないから。

 

あれから私をいじめてきたやつらを見返すために何ができるかを考えた。

 

いろいろなことに挑戦してみて、私には文才があることが分かった。

 

今ではコピーライターを目指して学業の傍ら日々執筆活動に明け暮れている。

 

何かを目指して生きるということはとても楽しいということを知った。

 

おじさんが教えたかったのはこうゆうことなのかもしれない。

 

誰もが知ってるような広告のキャッチコピーを任させてもらえるようになったら

 

おじさんに会いに行こう。

 

そのときのこともまた書けたらいいなと思います。

 

ずっと先の話になりそうですけどね。

 

それまで気長に待っていてください。

 

牛乳でも飲みながら。

 

~fin~

 

というわけでローソンの看板に纏わる嘘雑学でした。

 

これからローソンを見つけたときはいかにおじさんの熱い思いが詰まってるかを友達に教えてあげてください。

 

その後変な空気になってもおれは知りません。